ナレッジ・マーチャント(知識商人)が USEIの未来を拓く

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"ナレッジ・マーチャント(知識商人)"とは?

朝川
まず、"ナレッジ・マーチャント(知識商人)"とは何か?
結城
知識商人の着想は、ピーター・ドラッカーから得た。彼は資本主義社会の次は知識社会だと言っている。日本でも、野中郁次郎先生が知識経営というのを重視している。しかし、学術的な話以前に、サービス業や小売業で働く人達はナレッジをベースに仕事をしていると思っていたので、まさに私たちが目指していることや考えていることに一致すると思った。知識商人という言葉がぴったりくるモデルが、イトーヨーカ堂を創業した伊藤雅俊氏。自分の商売に関して豊富な知識を持っている。仕事・商売・商品に関する知識を持つと同時に、実際に店頭でお客様と接したり、商品を並べたり、掃除をしたり、伝票を書いたりという技術も持っている。商売の知識、商売の技術の両方を持っている。これこそ、ナレッジ・マーチャントの典型だと思った。ドラッカーが"ナレッジ・マネジメント(知識経営者)"、"ナレッジ・テクノロジスト(知識技術者)"、"ナレッジ・ワーカー(知識労働者)"という3つの言葉にした。当然、経営者はナレッジがないとやっていけないが、技術者がマネジメントの専門の知識を持ち、知恵に変える考え方を持ったら強い。
朝川
単にオペレーションに精通しているだけではなく、人を育てる、お金を管理する、組織をつくっていく、営業の強みを活かしていくというナレッジがあって、初めて技術も光る。
結城
ドラッカーは知識労働者に必要なのは、"ブレインズ・アンド・ハンズ"だと言っている。
ブレインズは脳みそ、ハンズは手、つまり、知識と技術。この両方を身に着けた人をナレッジ・ワーカーと言っている。私は、ワーカーという言葉が持つイメージを考慮して、商人(マーチャント)と置き換えて、ナレッジ・マーチャントとした。
朝川
ただ働くのではなく、考えて働く人。
結城
そう。先日、日経新聞が取り上げていたが、ホワイトカラーの仕事が無くなっている。ホワイトカラーの仕事は昔でいうと事務職だが、どんどんコンピューター化、デジタル化され、ITの世界が広がってきていて、それだけやっていた人は、仕事が無くなってしまう。むしろブルーカラーのほうが仕事がある。ブルーカラーの技術を持った人がナレッジを持つことになると、これからの時代に非常に有益な仕事ができる人ということになる。
USEIの"人材"でない"人才"の"才"、"ナレッジ・マーチャントを育てる"という考え方は、ぴったりきてると思う。
朝川
ドラッカーの"ポスト資本主義社会"のポストたる"知識社会"というのは、知識がいろいろなものを生み出すための資本に置き換わるとも言えるか?
結城
ドラッカーはそのことを強く言っている。
「知識は技能の基盤として使われるとき、初めて生産的となる。」と言っている。資本主義社会は、資本コスト・天然資源といった財が何かを生み出すときの基盤になる。
それに対して、社会主義は労働が基本であると言っている。
ドラッカーは資本主義や社会主義と違って、知識という基盤が何かを生み出すことだと言っている。
先進国の最大の問題は、知識労働者の知識がイノベーションされているかだ。
朝川
ドラッカーは、理想を求めて一歩一歩マネジメントを発展させていくことで人を大事にする社会が生まれる、一人一人の強みを活かすということを書いている。
時代に合わせて、考えて考えて発展させることが会社を強くする。結果的に会社で働く人も強くする。
結城
"ナレッジ"を会社がどう考えて、基盤にするのか、それが会社の存続を決定づける要因になっていると思う。アメリカのサービス業や小売業を見ていると、まさしくそれが重要なんだと。もちろん、資本・労働も必要だが第一ではなく、ナレッジが大切。現場で働く人たちに会うと、ナレッジが強く認識されている。小売業・サービス業はナレッジを強調されない業種だが、お客様から良い評価をされている店を見ると、例外なくナレッジ。お客様の健康、環境、楽しむ"遊"や"楽"にも出ている。シルク・ド・ソレイユにもそれが表れている。サーカスとショーの中間のようで、一つ一つのテーマがナレッジ、それをやっている人は技術を持ったスペシャリスト。それが相まって、今までのサーカスとは違うまったく新しいものが生まれた。シルク・ド・ソレイユというジャンルとして成り立っている。

"ナレッジ・マーチャント"と"顧客の創造"

朝川
"ナレッジ・マーチャント"と"顧客の創造"はどのように結びつくのか?
結城
ドラッカーは、「大切にするのは非顧客である」と言っている。
現在の顧客も大事だが、非顧客を探り当てたり、見つけたり、つくり出したりするときに、目に見えない存在なので、ナレッジが必須になる。
朝川
私もその部分は注目をしている。見なければならないのは、カスタマーだけではなく、むしろノンカスタマーである。
顧客になっていて当然の人たちが顧客になっていない理由を考えるべきである。
非顧客は変化をもたらす大事な存在である。社会全体に目を向けることが顧客を創造する。そう思っている。
結城
そのとおり。そのためには何が必要なのか。
パチンコホールの貸玉1円が、今は50銭や2円もある。かつてのお客様だけを見ていないから、4分の1の価格にするという発想が出た。
他の業種・産業を見て学び、パチンコ業界のナレッジが活用された。
朝川
最初は4円が苦しいから1円にチャレンジしてみようという店ができた。 ある企業が"1パチ"を商標登録し、そこから徐々に広まっていった。わが社は、1パチ・5スロの専門店の可能性を探っている。ただ、既存のやり方では、商売として成り立たないので、ビジネスモデルを見直すべきであると考えている。手を付けるべきことは山のようにある。今までの生活がしたいから同じことを続けて4パチを肯定し、1パチを否定する経営者がいるが、それは間違っている。
結城
儲けようと思ってやってたら、うまくいかない。今までのお客様だけでなく違うお客様を集客するため、大手ホールも1パチを始めたが、専門店にはなれない。
低価貸しの専門店をやれる会社は大きな価値がある。
朝川
私たちは大きな成功を積み重ねた訳ではないから、ベンチャーとして磨き上げたビジネスモデルで勝負ができる。競合に勝ちたいのではなく、日本に必要だと思ったから低価貸しの専門店を出している。パチンコ業界も再編される。ライバルがつぶすのではなく、お客様から見放されることによって淘汰される。お客様に選択の自由があるのは良いことだと思っている。周りに競合店があっても、一つ突出したビジネスモデルがあれば、お客様の豊かな生活の選択肢が増える。
結城先生が言われている"選択肢があることは豊かなこと"を実践したい。結城先生から学んだこと、勉強したことが大いに役立っている。
結城
そういうときも最大の武器は、ナレッジを持ったマーチャントの存在だと思う。
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