「生き残り」と「共存」

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USEIのビジネスモデル

<内部改革の苦悩>
朝川
ところで、今までの話は、経営の表面上の話なので外部からも認知できる部分でしたが、実は、経営内部の改革がすごく大変なのです。そこで、 内部改革に苦しんでいた会社の成功事例があったら、教えてください。
高橋
確かに、内部改革は大変です。それこそホッピーは、何でも新しい事をやろうとすると反対が出てくるので、最終的には人を変えていったのです。松井証券は、人が辞めてしまったので、コールセンターを作って、商売の仕方を変えたわけです。石坂産業や、ヒロタのシュークリームも旧体制を全部変えました。やはり古いやり方で馴染んでいれば、変化の方向性は別として、今までの人がやめていくという痛みは伴うし、歴史の中でも、上杉鷹山が米沢藩の改革をした時に、最終的に家老を切腹させたじゃないですか。そういう痛みが絶対伴います。

結城

朝川
本当にそうですね。私の場合は、最初、USEIに入って 財務関係を見たら集中治療室(末期症状)レベルの状態だったのです。そこで、まず、自分でヒト・モノ・カネにおける処方箋を作って対応しました。財務の改善を飛躍的に進め,今では 実質無借金ともいえる状態になりました(注:借入はゼロではありませんが,全ての借入を保有現金内で即時返済できる状態という意味です)。番頭とか先代との組織で苦労するというよりは、特にマネジメントをする人間の問題が深刻で、全てに関して 古株の幹部から「お前は分かってない」という態度で出られたりしました。
高橋
最初はそうなりますよね。
朝川
私は、全社員とヒアリングした結果、若手でパチンコの知識もあるのに、活躍できる場がなくて鬱屈している人たちがいたので、「彼らを店長にしましょう」という提言をしました。結果、いろいろありましたが、最終的にはマネジメントに問題のあった方々には去っていただきました。その後、たまたま新しい機械のルールが生まれたりして、運良く業績も上がり始めたのです。でも、私がずっと、財務も営業も細かい所を全部見ていると、だんだん慣れが生じてくるし、日々の事だけで精いっぱいで新しい事へのチャレンジ精神が、若干薄れてきたのかもしれません。2007年ぐらいに、業績が下降してきたのです。このままでは、変化に対応できないし、まずいなという時に、以前の会社の元同僚が一緒に仕事がしたいと言ってくれましたので,入社してもらい営業のトップとして営業全般を任せることにしました。しかし、ちょうどその頃に、4円パチンコのこの規模だと、簡単には生き残れないので、 生き残るための1円パチンコを選ぼうということを提案したら、先代の会長と営業のトップから、 猛反対されて、「どうやってもうけるのですか、どうやって食べていくのですか、どうやって機械買うのですか」などとさんざん言われました。私としては、命令ではなく、納得してほしかったので、様々な統計データを見せて、彼らに考えてもらい、3カ月後に納得してくれたので、実験しましょうということで、2010年に低価格専門の新店舗を出しました。通常4円パチンコの新店の場合は、勝つと大きいから、あちらこちらからお客様が来るわけです。でも1円パチンコの場合は勝ってもたかがしれているので、最初お客様は全然来なかったのです。低価格専門の新店にはお客様が来ないということを、そこで初めて知ったのです。しかし、いろいろと取り組んで、半年ぐらいすると、お客さまが増えてきました。いったん増えてくると、「1円パチンコって悪くないよね」ということで、その地域の方々からだんだん認知されて、成功体験ができてきました。 低価格専門店でもきちんと取り組めばビジネスになるということも分かってきて、今は、2年に1店舗出しています。
<低価格店の秘密>
高橋
普通、低価格にすると、稼働率を上げて行かなければならないですよね。基本的にそういうことでいいのですか。
朝川
はい、やはり ドラッカーも言っていますが、非顧客を顧客にしたいと考えています。価格が4分の1ということは、その分だけ対象顧客が増えると考えることができます。
高橋
大体お客さんは1回あたりどのぐらいお金を使うのですか?
朝川
平均ですと、4,000~5,000円ぐらいです。いろいろなお客様が来店されています。例えば、11時頃家事が一段落して、35歳の娘さんと70歳ぐらいのお母様が二人で、車で来店され、3時頃帰っていくような風景がよく見られます。これは、4円パチンコの時はあり得なかったですね。他には、近所の方同士が1台の車に乗り合いで来て、それぞれ何時間か遊んで帰っていくというような遊び方をするお客さまもいます。中には、やはり一日で10,000円使う方もいますが、実際に10,000円も使うのは大変です。私にはとても真似できません。もちろん,1,000円~2,000円ぐらいの方もいらっしゃいます。 どれも年金の範囲内で遊べる環境です。
高橋
要は、ディズニーランドに1日行ったという感じですね。 大人の遊園地みたいな。
朝川
そうです。
高橋
ところで、店舗は、2010年からコンスタントに2年に1回出しているのですね。
朝川
はい。順調に2年に1店舗出していますが、USEIは建物をつくらないで、 全て居抜き(注:前のテナントが使用していた建物・設備をなるべく活かして出店すること)でやることにしています。今、業界自体が悪くなっているので、全体の店舗数はピーク時に比べたら減っていて、倒産物件が多くでるので、私たちはその中で良い物件を活用させてもらっています。
高橋
借りるのね、買うのではなくて。
朝川
はい、一切買いません。
高橋
じゃあ、営業キャッシュフローで回せますね。
朝川
リスクもあるので、負けた時のリスクヘッジという意味では、 持たない主義に徹するという方針です。また、客観的なデータと分析結果によって、何をするのか方針を決める際に、物件を持たないことによって冷静さを保っているというわけです。
高橋
僕も昔、商店街で、商店の調査をやった時に、自分で地べたを持っている商店と借りているところを比べたら、借りている方がやはり利益がいいです。だから何かあるのかなと思います。
朝川
オペレーターの能力が落ちたら、そもそも仕事はやっていけないので、やはり オペレーターに徹することで、背水の陣を敷くというか、そこに一生懸命になることによって、だんだんと能力の差が開いてくると思っています。それもひとつの覚悟だと思うのです。
嶋内
このやり方は, 物件を持ちたい人とコラボをして一つの店を完成させるというビジネスモデルにもなりますね。
高橋
今は役所がビル建てる時も、そういう形でやっていますよね。
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