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3. 経営者として

<トップの役割とは>
朝川
では次に、経営者としてのテーマに入りたいのですけれども、社長を交代されて、どのくらいたちましたか?
中岡
ちょうど1年です。
朝川
前任の社長から色々なものを受け継いできたと思うのですが、前任の社長のここに共感しているから推し進めていきたいというところや、ここはちょっと気を付けようかなというところを、お聞きしたいと思います。

トップの役割とは

中岡
前任の井寄は元々工場側の出身で製造系のネットワークが強かったので、何か問題が起こるとすぐに開発、生産、購買などの責任者に直接電話して解決を図っていました。すごく動きが早かったですね!私にはまねできません。
ただ、全部自分でやっちゃうので担当者は立場がなくて泣いていました。
朝川
なるほど、これが強みと思ったら弱みとなるんですね。では、踏襲したところはどこでしょうか?
中岡
私が1年前に就任したときには、井寄が今の組織を準備してくれていました。
今の組織は特需対応型なんです。この3年の間に改鋳対応、スマート遊技機対応をやって2024年には改刷という一大イベントがあります。 グローリーはこれまで大きなイベントを何度も経験しているので、「こういう場合はこの体制にしなければいけない」ということが良く分かっていて、それは脈々と引き継がれています。頑張って乗り切れる体制にして、私にバトンタッチしてくれたので、すごく感謝しています。
朝川
いわゆる、特需のXデーに対応する組織を残してくれたということですか?
中岡
はい、そうです。
朝川
中岡さんの社長就任のインタビューも読ませていただきましたが、前任者から引き継いでいることの中に、特に「新しい事に挑戦する」というキーワードが書いてありましたが、このあたり、どういったところに今はチャレンジしているんでしょうか?
中岡
グローリーナスカは2028年に50周年を迎えます。私が就任する1年前に「長期ビジョン2028」を作成しました。「新しいを創造し実現する」というキーワードがあって、井寄から引き継ぎを受けたときも「新しい事をやらなくては駄目だ」と申し送りを受けましたので「新しい」に挑戦する環境つくりを始めています。
朝川
では、最初に行なったことはどんなことでしょうか?
中岡
私はグローリーナスカに来る前から課題がいくつか見えていました。一つは本社と現場に壁があって情報の伝達がうまくいってない。もう一つは営業資産(例えば個人が持っているノウハウ、経験値、 成功事例、失敗事例)これが共有されていない。非常にもったいないと思いました。
いちばん最初にしたことは「成功事例、失敗事例を言語化して、共有してくれ」と指示をだしました。すぐに営業部門が着手して、日報システムができたんです。日報システムに営業マンの行動と共に成功事例や共有すべき情報を書き入れることが習慣となりました。

トップの役割とは

成功事例は言語化して共有し、再現性の高い事例は表彰しようということで、先日、ささやかですが表彰式を行いました。 情報の伝達については全国に社員が散らばっているので、なかなか情報が正しく全員に届かない。そこでteamsを使って「経営方針発表会を全員視聴してよし」ということをやってみました。

朝川
全員というのは、どこまでですか?
中岡
基本はフルオープンです。 方針を部門長や支店長に伝えて、これを課長に伝えて、課長が部下に伝えると、絶対どこかでフィルターかかって正しく伝わらないと思ったので全員参加に挑戦しました。しかし、私が言っちゃいけないことまでしゃべるので、今年の経営方針発表会は、録画して経営企画が編集したものになりました。現場主催の会議は支店長が閲覧権限を決めるのですが他支店にもオープンにしています。「全社員の前で同時に同じ事を発信する」これが新しい取り組みとして最初にやったことです。
朝川
そのくらい熱量がないと、聞く側に伝わらないと思います。最初から「言っちゃ駄目」みたいなことを作ると、結局当たり障りない話ばっかりして、こちらの熱量がなくなるから伝わらない。だったら、「ピー」って入れた方がよっぽど良いというのはわかります。1年やってみた結果、何か変わりましたか?
中岡
情報共有はできるようになりましたが、まだまだ、壁をぶち壊せていないと思っています。
朝川
一番の壁をどこに感じますか?
中岡
本社と現場ですね。私が方針や目標について発信するときは沢山の短いメッセージ性のある言葉を添えています。そのメッセージは1年中繰り返し連呼するのですが、その中でも「壁をぶち壊せ」はよく言っています。となりの人との壁、となりの組織との壁、本社と現場の縦の壁をぶち壊したいと思っています。 そして社員にはどんどん新しいことに挑戦してほしいと思っています。挑戦しやすい環境をつくることが私の役割だと思っています。
<“新しい”に挑戦する風土>
中岡
朝川さんは、“新しい”に挑戦する風土をどうやって作り上げたら良いと思いますか?
朝川
そうですね、グローリー様は、やはり日本だけではなくて世界中にあるので、私たちとは組織の大きさが違うので一概には言えないと思うんですが、それでも、基本的に共通しているのは、新しいことを始めようというと、人間はそもそも新しいものに臆病だという本質的な原則があるので、その人達が感じる恐怖や、おびえているものを何とか取り除く努力をするところから始めなければいけないと思っているんです。
特に現場で今の仕事がやりやすいと思っている人は、新しい事をやるというと、それだけで拒否反応を示しますから。

“新しい”に挑戦する風土

中岡
そうなんですよ。新しい事をやると絶対苦労するんです。分かっているんですけども、 私自身が昨日と同じことをするのが嫌いなんです。
朝川
そうですね。やはり、私もチャレンジする性格なのですが、サラリーマンの下っ端だったころは、急に上から新しい事をこうしますと言われると、面倒くさいという感情があったので、その気持ちは忘れないようにしたいなと思っています。
ですから、これをやるとこんなに楽になるとか、得することが待っているという話は何回もします。結局その臆病な人を変えられる要素って、やはり最終的には、会社が良くなって生き残る率があがると、自分達にとっても得になって、自身の生活ももっと良くなるよという話につなげられるかどうかだと思うんです。
中岡
そうですね。
朝川
特に上の方たちには、会社を変えるんだという思いで十分ですけども、末端の方たちに対しては、それを変えたらこういうことがあるということを分かりやすく伝えないと、サボタージュされたりします。特に大きい組織だとさらにそれが大きくなるので、何回も言う必要があるかもしれません。この部分は、組織の大きさに関わらず、実は一緒で、もう聞き飽きたよと言われてからがスタートだと思っています。変わりたくない人にとっては、今のままでもそこそこ良かったのにという感情が大前提にあるので、中間職、現場の末端職の人たちに響く言葉とは何だろうということを、探すようにはしていますね。
<経営と組織>
朝川
中岡さんがトップになって、今こういうところで苦労しているという、エピソードがあったら教えてください。
中岡
私は小さな部門の部門長は経験してきましたが、経営の勉強や経験をしたことがありません。稲盛和夫氏の「会計が分からんで、経営ができるか」という本を読みました。恥ずかしながら会計が苦手なので勉強していますが頭に入ってこないんです。会社経営に大変苦労しています。
朝川
先ほどからお話を聞いていると、得意分野であるチーム作りをベースに、意思疎通を末端まで浸透させるということを主軸に経営をされているということですか。
中岡
そうですね。チーム作りはとても好きで、ずっと昔からいちばんやってきたことですし、グローリーナスカに来ても、かなり意識しています。
朝川
中岡さんは、意思決定の強さとか情報伝達に対しては、ものすごく長けていると思うのですが、自分の考えを正確に伝えるという点で、経営者として気を配っていきたいところは、何かありますか?
中岡
それで言うと、また組織論になりますが、とにかく縦階層を減らしたいんです。
朝川
なるほど。
中岡
階層が縦に多ければ多いほどやはりフィルターもかかるし、情報が伝達しにくいので、できるだけフラットにしたい。今はやりのティール組織※2のようなそんな高いレベルじゃないですけれど、フラットな組織の方が良いと思っています。
朝川
その方がより意思伝達も早いし、悪い問題も早く上がってくるということでしょうか?
中岡
はい、そう思います。縦の壁が壊せたら、次は横の壁ですが、こちらの方は難しくありません。
朝川
階層を減らして、こういうことを実現させたいという何かがあるのですか?
中岡
いや、そこまで深く考えていません。とにかく情報が双方向で伝わりやすくなると思います。階層が沢山あると一番下の人たちって誰に報告したらいいのか?直属の上長だけで良いのか?念のためその上までcc入れた方がいいかな?いや余計なことするなと言われるかな?そんなことにまで気を使うことになりかねません。
朝川
確かにそうですね。
中岡
最終的には、コミュニケーションがいかにスムーズにいくか、ということにつながると思うのです。
朝川
そうなると、コミュニケーションが少しやりやすくなるような工夫を、何かされているんですか?
中岡
今、各部門が色々工夫をしているようですが、在宅が多い部門については、Teams のチャットで朝礼夕礼をやっています。
私と全社員のコミュニケーションは社内ホームページに「中岡のメッセージ」というコーナーを作って、2週間に1本のペースで、いろいろな発信をしています。そこには何か印象に残るような短いキーワードを添えています。それを全社員が見られるようにしています。さらに直接メッセージを返せる機能も付けて、今まで顔合わせたことない人たちと、メッセージのやり取りができるようになっています。
朝川
全社から、けっこうたくさんのメッセージが来て大変だったりしませんか?
中岡
1投稿に1~2本くらいです。日ごろ顔合わせている人はわざわざくれないですし、もしかしたらメッセージの送信を遠慮している人もいるかもしれないですね。
朝川
でも、メッセージを返信してくれるのは勇気がある人たちですね。たぶん中間管理職の人たちが、色々な努力をして、返信してもいいんだよというふうに伝えているのだと思います。
※2ティール組織
ティール組織とは、フレデリック・ラルーによって提唱された新しい組織の概念
社長や上司がマイクロマネジメント(監督・干渉)をしなくても、組織の目的実現に向けて推進し続けることのできる組織のこと
<リーダーとは>
中岡
では、朝川さんは、社長に就任して一番最初に何をされたんですか?
朝川
私は、最初にこの会社に入ったときの方が大変で、今いる主要メンバーは誰もいないし、ホームページにも書いてありますが、お客様数は、入間店が8人でしたから、会社が倒産する寸前だったんです。そこで、当時、色々な項目ごとにカルテを作って、「この会社はもう緊急治療が必要な重篤患者です」という診断をして、どれから優先順位を付けてやっていこうかを決めたのが、私がこの会社入って初めにやったことです。その後、いくつか立て直しをしてから、社長に就任して、最初にやったことは、クレドを作ったことです。
中岡
ホームページに載っていますね。
朝川
はい。これを本気でやりたい、会社に浸透させたいと思い、クレドや行動指針を作りました。低価格のビジネスをするというのは、その時決めていましたから、低価格にして、尚且つこの「楽しい時間を提供する」というクレドに沿って事業経営をするのだということを内外に発信して、それに共感した人だけUSEIに来て欲しいということを言っていました。
そうしたら、大手で役員をやっていたすごい経歴の人が、当時4店舗しかなかったUSEIに面接にきて、意気投合して入社して、今も主要メンバーとして活躍しています。
やはり、「何をしたいかということ」と、「これだけはちゃんと守るということ」を最初から決めて発信したことが、結果的に少しずつ、我々が本気でやりたいことを会社の中に浸透させることにつながっているのかなと思います。
中岡
では、今は、トップとしてどんなことをしていますか?
朝川
各部門、例えば今の営業設備だったら、もう担当部長の足元にも及ばないですし、営業の専務は、たぶん業界の中でトップクラスに営業に詳しいし、さらに総務人事とか法務部門に関しては、専門知識に長けている人がいるなど、各分野に私より詳しい人が山ほどいて、社長のやることは、実は2つしかないと思っているんです。
1つはクレドの旗を何があっても下ろさないということ。
もう1つは、先ほどの稲盛さんではないですけれども、何があってもキャッシュをちゃんと回し続けること。この2つさえ守れていれば、あとは大体やってくれると思っています。
私は、命令をあまりしないんです。命令をしないで、何回もお願いするんです。根負けした営業トップが実験という形でやってみて、いろいろと試行錯誤して、10年たって、やっとほぼ全店舗に何回もアップデートしたバージョンのものが浸透して完成するという感じです。
また、私は、反論することを喜んで受けるという組織にしています。一応トップなので、51%ぐらいは意見を通させてもらいますけど、49%ぐらいは、逆に私の意見が通らない方が健全でいいと思っています。「だからどんどん反論してもらっていい」と言ったら、本当に反論がばんばん来るんですが、その方が、合理的に正しいことが行われると思うので、反論も言いやすい組織にしています。
中岡
昨年3月に井寄と私が引継ぎのご挨拶に伺ったとき、朝川さんから井寄に「やり残したことはありませんか」という質問をされて、井寄が「人材育成」と答えたんです。その時に朝川さんが私に「それを聞いてどう思われますか」と聞かれて、私が「親分は、少々ポンコツの方が部下は育ちます」と答えたのを覚えていますか?
朝川
覚えています。
中岡
その言葉を私に投げたのは、実は私の部下なんです。その当時の私の部下は皆優秀でなんでも安心して任せられる、そのナンバー2が言った「親分は、少々ポンコツの方が部下は育つんですよ」という言葉をずっとインプットしています。

リーダーとは

朝川
なるほど。たぶん、その真意は、本当のポンコツでは困るので、ポンコツのふりしていた方がいいということだと思います。だから、上手にポンコツでいること、実際に口をだすタイミングを冷静に見極められるというのは、私はトップとしての素養がすごいというか、才能なんだと思います。
やはり、中岡さんは、チーム作りがうまいのだと思います。そういうリーダーの部下でいると、やっぱりこのリーダーに恥はかかせられないという意思がチームに出てくるのだと思います。
中岡
そう思ってくれたら、しめしめですけれど。
朝川
「社長だから俺をもっと敬え」というような人たちもいらっしゃいますが、でもそういうことをやると、大体良くないことが起きるので、任せていいものは任せた方が早いというのは、非常に合理的だと思います。
中岡
私も同意見です。
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