「生き残り」と「共存」

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「生き残り」か「共存」か

<「共存」とは何か>
嶋内
朝川社長は,低価格専門でやっていこうという判断に、不安は無かったのですか?
朝川
4円パチンコをそのまま継続する方が不安だと思っていました。なぜなら航空業界もそうでしたが、パチンコ業界もパワー勝負になってきていて、規模が大きいところは機械の台数を相手より多くすれば勝てるのです。私どもの入間店近隣にも、全国屈指の最強店と、関東で1、2を争う強豪店が立て続けにオープンし、その競合に対し、私たちは何億円も費やして対抗する店舗をつくるのか? いや、そのビジネスモデルと戦っても、勝ち目はないと思いました。それなら、 戦いのポジションをずらすしかないと考えたわけです。
高橋
それだと設備投資もあまりかけなくていいということですか?
朝川
4円パチンコの場合は、最高級の絢爛豪華なお店でなければ、お客様から認められませんが、1円パチンコの場合は「低価格のわりにまあまあいい」というものを目指せます。スーパーが大手百貨店に対抗するには、同じ売り場を作るのではなく、戦い方のステージを変えるというのと同じ考え方です。

結城

高橋
なるほど、そういうことですか。
朝川
戦う場所を自分で設定することが大切だと考えています。サウスウエストも、ユナイテッドやノースウエスト(はつぶれましたが)をつぶそうと思ってやったというわけではないように、そう捉えていけば 大手競合との共存はできるだろうと私は考えています。
嶋内
高橋先生、 生き残るという中で、「共存」というキーワードは、どう考えればよいでしょうか? 例えばライバル企業をつぶすのではなく、相手も生きて、自分のところも発展していくということについては?
高橋
一番分かりやすいのは、外食を考えるといいと思います。高級なところと安いところなど、いろんなタイプがあるじゃないですか。
嶋内
なるほど、なるほど。
高橋
私も高いところも安いところも行くし、また全然違うコンセプトのところにも行きます。同じように、パチンコをしたいという場合も、少し山っ気があってやりたい時と、純粋に楽しみたい時と、みんな使い分けるわけですよね。そういう需要はあると思うのです。
<本気でやる覚悟>
嶋内
ところで、朝川社長、USEI(ゴープラ)の競合店が、4円パチンコだけならいいですが、競合店も1円パチンコをやっている中で、共存はできるのでしょうか?
朝川
1円パチンコの専門店とは共存できないと思っています。肝心なのは、ビジネスをどこで成立させるかということです。基本的に4円パチンコでもうけているところは4円パチンコで勝負したいので、戦いのポジションが違います。だから、4円パチンコが主体で、1円パチンコもやっているところであれば十分共存できると思っています。
嶋内
ということは、 4円パチンコ主体の会社のやる1円パチンコとUSEIの1円パチンコは、似て非なるものということですね。
朝川
そう思います。高橋先生の著書にもありましたが、やはり重要なのは、 覚悟だと思っています。 どこの主戦場で戦うのかという、その覚悟です。私は、今は1円パチンコのビジネスと 心中するつもりでやっています。
嶋内
私も、高橋先生の著書で注目したのは、 「相手が本気になれない土俵で戦う」ということでした。私たちのパチンコ業界も朝川が進めてきた1円専門と、他の4円主体の店がやる1円というのは、全く違っていて、彼らは本気で1円に取り組めていないと思います。そこが相手の隙をついているのかなと、思うのですけれどいかがでしょうか?

結城

高橋
例えば 「ドトールコーヒーの吉祥寺戦争」というのがあって、いろいろな外資系企業やスーパーマーケットなど、大資本の参入に対して、結局ドトールコーヒーが勝ち残ったのですね、この時に創業者の鳥羽博道さんに聞いたら、「こっちは専門、それで生きている。こっちはそれに命をかけている」と言っていました。経営というのはいろいろな工夫とか努力の積み重ねがあって、何か一発デカいもので決まるわけじゃないのです。全部が全部専門でやっているところが生き残るわけではないですけれども、しかし、どちらが強いのかという時に、 専門で勝っているところには、「本気」と「覚悟」があるのではないかと思います。
朝川
私たちの業界で考えると、様々な理由からパチンコ業以外のビジネスに参入している企業が少なくありません。異業種への参入も良いとは思いますが、私は、どうしてもっと安くて楽しめる普及価格帯のパチンコにチャレンジしないのかと思っていたのです。しかし、様々な分析をしたり、1円パチンコを経営してみた結果、確かに簡単なことではないと思いました。 低価格のビジネスは考えなければならないことが多くて、なかなか一筋縄ではいかないです。
高橋
LCC型のビジネスは、大変ですよね。
朝川
でも 簡単ではないから、誰もやらないということにも気付きました。
高橋
ああ、そうですよね。だから決断したのですね。
朝川
ええ。独壇場ならば、簡単ではないけれどチャレンジのしがいもあるし、周辺ビジネスもまた新しいものが出てくるかもしれないと思いました。さらに、客数を増やすことで世間の認知度を上げ、私たちの店舗の周辺では、 低価格でまあまあサービスの良い店があると分かればパチンコのイメージも変わると考えています。今は、高橋先生のお話や色々なケーススタディを研究しながら、自社のビジネスのケースを、つくり上げているというところです。
<経営者の業績とは何か>
高橋
僕も今日の対談に向けて、LCCだけではなく、いろいろと考えてみたけれど、やはり偉大な経営者の業績は、 「新しい定義を業界に与えられる」ということがすごく大きいと思います。アート引越センターは、引っ越し業者というダーティなイメージを変えたし、埼玉県の石坂産業という廃棄物処理業者は、ゴミ屋の娘と言われても、業界のイメージを一変させているし、ホッピーもいわゆる安くて簡単に飲めるものから、健康志向のものに再定義をしたことによって、企業が変わりました。清掃業者は、暗い、低賃金、採用ができない、離職率が高いという業界だったのですが、山口にあるサマンサジャパンは、デパートの清掃要員であれば、デパートのホスピタリティの一翼を担う人であるという社員教育を徹底して、お客さんに「〇〇の売り場はどこですか」と聞かれてもちゃんと答えられるようにすることで、清掃業者を再定義して全然違うものにしました。ドトールコーヒーも、怪しげな喫茶店のイメージを変えようとしたのです。だから、こういう例を見てくると、 ギャンブルのパチンコは×だというのも同じだと思います。
朝川
ギャンブルのパチンコは×だというのは,再定義としては一定のインパクトがあったように思います。
高橋
僕も20代の頃はよくパチンコ屋さんに行きましたよ。昔はお金のかからない娯楽だった。遠ざかった原因はいろいろあるのですが、電動パチンコになって、いわゆるギャンブル性が強くなってきて、一回に使うお金が増えた感じでついていけなくなったのですね。だからちょっと楽しめる場所、大人にとっての町の遊園地みたいなイメージでずっとやっていてくれたら、今でもたぶん行くと思います。
朝川
おっしゃる通りですね。今、大体4円パチンコでは30分で1万円以上を使います。そんな環境の中で、キャンブルとしてのパチンコやスロットにはまる人もいるので、それには私たちは反対です。ホームページや会社パンフレットにもはっきりと 「私たちはギャンブルのパチンコに反対です。」と書いてあります。あくまでも、私達USEI(ゴープラ)が提供するのは 楽しい時間であると考えています。そのための努力が少しずつ実を結びはじめており、お客様からも支持されるようになってきています。現在は埼玉県内に約550店舗ほどパチンコホールがある中で、稼働率において、 埼玉県内の20位以内に,ゴープラの店舗が5店舗ランクインしています。
高橋
ギャンブルだけではなく、物事というのは、何かちょっと弾みがつくと進み過ぎるところがありますからね。朝川さんが考えている新しい定義には、そもそもの出発点にヒントがあってやられたということもありますが、業界的には 誰も選択しないあえて安価なパチンコで実績をつくっているところもケースとして面白いと思います。 私がケースを書きたいくらいです。
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